『BOSS GT-1000』を二年間使い倒したので再レビューしてみた

特撮ソングカバーバンド『海賊版戦隊セイクリッドヘキサゴン』のギタリスト、ヤマシタです。

音作りのメイン機材として、歴代のGTシリーズを愛用しています。『BOSS GT-1000』についても漏れなく発売日に購入し、現在もライブの現場からレコーディングまで幅広いシチュエーションで使用しています。

現場で活躍するGT-1000
現場で活躍するGT-1000

そんなGT-1000も発売開始から二年が経過しました。

本記事では、長期に渡って製品を使用した一個人のユーザー目線で、改めて製品レビューを書いてみたいと思います。現在購入を検討している方の参考になれば幸いです。

GT-1000を選んだ理由・使い続ける理由

GT-1000は、2018年4月に発売された次世代の“フロア型アンプ/エフェクト・ユニット”です。(ハイエンドマルチとかギターマルチプロセッサーとか単にマルチエフェクターと呼ばれたりもしますが、公式HPにはこのように記載されていました。)現在のBOSSブランドのフラッグシップモデルとなっています。

当時、老舗ブランドながらもハイエンドマルチ競争には一歩出遅れてしまっていた感のあったBOSSでしたが、個人的にはこのモデルの登場で過熱する市場の中心に躍り出たのではないかと思っています。

そんなGT-1000の魅力を語るにあたっては、業界最高クラスの超高音質を実現する『超高速カスタムDSPチップ 』、あらゆる接続環境で意図した通りのサウンド・デザインを可能にする『AIRD』、スマホから操作できるアプリ『BOSS TONE STUDIO』など、数多くの目を引く単語をあげることができます。

これらの単語については、私なんかが語るよりも公式HPを読んだ方が十分な情報を得られるかと思うので、ぜひご一読ください。

参考 BOSS - GT-1000 | Guitar Effects ProcessorBOSS - JP

では、私がそんなGT-1000を選んだ理由は何なのか。GT-1000の購入に至るまでには当然、スペックを細かく調べたり、他社製品との比較検討を重ねたりしたわけですが、その中でもGT-1000は…

音・機能・物理スペック・サポート・価格

この5つの項目に対するバランスが一番良いと思ったからです。(項目自体はすごく当たり前の内容ばかりですが。)そして、その後も使い続けているのは、この5つの項目に対する実際の満足度が高いからに他なりません。

ここからは、これらの5つの項目について、実際に二年間使ってみた上での具体的な評価を書いていきます。

音について

まずは、GT-1000の音についてです。それを語るにあたっては、『AIRD』アンプに触れないわけにはいきませんよね。

AIRDアンプについて

GT-1000の最大の売りであるアンプ・モデリングには『AIRD』と呼ばれる技術が導入されており、出音の中核を担っています。

BOSSの最新技術の“AIRD”では、アンプとスピーカーは切り離せない関係にあると考えています。この相互作用までも徹底的に追い込んで再現することで、生々しいチューブ・アンプ・サウンドを実現しています。

これにより、サウンドだけでなく本物のアンプと同様のダイナミックな弾き心地を実現し、ギタリストのフィーリングを余すことなく表現できるのです。

BOSS – The Ultimate Guide to GT-1000

この技術により、生々しいチューブ・アンプ・サウンドとダイナミックな弾き心地を実現している、とのことです。

当然ながら、良い音が出ます(小並感)。

そんな元も子もない言い方をしてもしかたないので、『AIRD』によるGT-1000のアンプ・モデリングの音に対して思うことの言語化に挑戦してみます。(まあそれがなかななか難しいのですが。)

また、一言に“良い音”と言っても、そこには二つの意味が存在します。一つは、“音質”が良いということ。もう一つは“好みの音”であるということです。これらの2つの視点を持って読んでいただければと思います。

音が立体的で解像度が高い

これは、初めて音を聴いた瞬間から感じました。音に奥行きを感じるし、密度もすごいな、と。それまではGT-100をメインの機材としていたのですが、一瞬で“音質”面でのレベルアップを感じることができました。

ハイの存在感がすごい

これまでのマルチエフェクター(低価格帯)には、ハイの存在感に物足りなさを感じることがありました。それは、ハイを上げれば解決するというようなことではなく、EQの補正では解決できない音質そのものの問題でした。

しかし、GT-1000の音には音抜けの良さや、音の存在感に繋がる力強いハイが存在し、ここにも“音質”の良さを実感しています。

各パラメータの効き幅がすごい

どのアンプ・モデルもEQの効き幅がすごく広く、大胆にいじることで印象がガラッと変わり別物のアンプのように感じることもあります。これにより、音作りの幅はかなり広くなっています。

空間系のノリが良い

特にディレイのノリの良さにはびっくりしました。ノリが良すぎるので、ハウリングに気を付けましょう。

“GT-1000っぽさ”が存在する

GT-1000の音には、癖とまでは言いませんが、“GT-1000っぽさ”は存在すると思います。

私が普段からGT-1000を使用しているからというのは大きいでしょうが、現場で他バンドのギタリストの音を聞いて「あ、これきっとGT-1000だな。」と見ずともわかってしまうこともあります。しかも大体その通り。

この“GT-1000っぽさ”を言葉にするのがなかなか難しいのですが…無理やりしてみるならば、『暴れずにまとまりが良い音』とでも言いましょうか。(これまた曖昧な表現ですが)形で言うと『四角』なんですよ。

決してネガティブな意味ではないです。これは“好みの音”かどうかの領域だと思っています。

もしかしたら、これが俗に言う“BOSS臭”(もはや死語)なのかもしれません。なんじゃそらって感じですが。

アンプ・モデルの少なさは気にならない

搭載されているアンプ・モデルの種類は、他社の同価格帯の製品に比べるとかなり少ないです。

しかしながら、前述のようにEQの効き幅が広かったり、各アンプの『GAIN SW』のパラメーターによってもキャラクターが大きく変わるので、作り込める音の幅は広いです。

更に言うと、そもそも“好みの音”が出る気にいった2~3種のアンプ・モデルが見つかればほとんどそれしか使わないので、モデリングの種類が多くても結局ほとんど使わないって人も多いのではないでしょうか。私も正にそうです。

ちなみに、私がよく使うモデリングは『X-HI GAIN』『X-MODDED』『BRIT STACK』です。Xが頭に付くアンプ・モデルはBOSSオリジナルのものですが、かなり使えます。

他の情報発信されているギタリストの方がどのアンプ・モデルを使っているのかは、以下の記事にまとめています。

プロのギタリストはGT-1000でどのアンプモデルを使っているのか調査してみた

アンプの“本物感”にこだわるならやはりkemperが最強?

私にとっては、AIRDアンプが実機のアンプに似ているかどうか…ということは重要ではありません。“好みの音”が出せればOK、という思考で機材を選んでいるからです。

しかし、「あのアンプと同じ音が出したい!」というような考えがあるのであれば、GT-1000のようなモデリングタイプではなく、プロファイリングができるkemperが、現状では最強の機材になるのではないでしょうか。

kemperのWebページには、プロファイリングについて以下のように記載されています。

プロファイリングは、あらゆるアンプのトーンやフィールをそのまま抽出する、他に類を見ない技術です。抽出過程はわずか1分。これで、あらゆるギター/ベース・アンプに変貌します。

Profilerに内蔵の各プロファイルは、いずれもターゲットとなったオリジナル・アンプとの厳しいA/Bチェックを経たものですので、違いを聴き分けることはまず無理でしょう。

OVERVIEW | kemper

kemperもすごいよね。未来に生きてる感。

機能について

ここでは、GT-1000に搭載されている便利な機能を紹介します。

ハードウェア系の機能

パッチチェンジでの音切れがほぼ無い

高性能なDSPチップのおかげなのか、パッチチェンジがめちゃくちゃ早いです。音切れがほとんど気になりません。

これにより、今までの1曲1パッチという考え方から解放されました。

全てのスイッチに機能割当が可能

GT-1000のスイッチは、上段がBANK▼/▲とCTL1~3、下段がパッチ選択となっていますが、これはただの初期設定であり、実は全てのスイッチに自由に機能を割り当て直すことができます。

これにより、パッチの運用方法が無限大に広がりました。

GT-1000のスイッチ
GT-1000のスイッチ

PC・タブレット・スマホからも『BOSS TONE STUDIO』でエディットが可能

私も音作りの際はほとんどPC版かタブレット版を利用しています。音作りのために逐一しゃがみ込まなくてよくなったのは、腰痛持ちにはすごくありがたいです。

iPad版とPC版の『BOSS TONE STUDIO』
iPad版とPC版の『BOSS TONE STUDIO』

『BOSS TONE STUDIO』はBOSSのホームページから無料でダウンロードできます。

RECの際にはオーディオインターフェースとして利用

自宅でのギターレコーディングの際には、PCとGT-1000をUSBケーブルで接続し、オーディオインターフェースとして利用しています。エフェクトの掛かった音とドライ音(エフェクトの掛かっていない素の音)を同時に録音でき、録音後のリアンプも可能です。

エフェクト系の機能

パッチを跨いで共通のパラメータを使えるSTOMPBOX

STOMPBOXにエフェクトのパラメータを保存しておくことで、他のパッチとも共通でパラメータを利用することができるようになります。

定番の設定を素早く呼び出せるのはもちろん、保存しておいたSTOMPBOXのパラメーターを変更することでSTOMPBOXを使用しているパッチ全てに変更を反映させられるという面でも非常に便利な機能です。これにより、パッチ作成の時間が格段に早くなります。

ディレイが5つも使える

1パッチ内でディレイが5つも使えます。ソロ用、バッキング用、付点8分音符用、と使い分けが必要な際に便利です。

また、そのディレイのうち1つは『MATER DELAY』と呼ばれ、パッチを切り替えても残響音が残る仕組みが搭載されています。ちょっとしたことですが、これによりパッチ運用の幅が大きく広がりました。

伝統的な形式ながらも複雑なルーティングが可能

GT-1000は、Line6のHelixのようにエフェクトを自由自在に配置できたり、ルーティングを自由に組めたりするわけではありません。

GT-1000では元々のエフェクト配列が決まっており、それを組み替えていくという伝統的な(?)方法で音作りをしていくわけですが、必要充分な分岐数とエフェクトの同時使用数は満たしているので、複雑なルーティングが可能です。

良く言えばそれは、今までのマルチエフェクターの例に倣ったやり方であり、非常にわかりやすいとも言えます。

参考 【GT-1000】 1つのパッチで使用できるエフェクト数はどのくらいですか。 | Roland - Support - Q&ARoland - JP

物理スペックについて

GT-1000の物理的なスペックについて見ていきます。

重さ3.6kgは軽い

この価格帯の製品で約3.6kgは軽い!

いやほんとに約4.8kgのGT-100、約5.7kgのHelix LT、約4.6kgのKemper(フロア・タイプ)と比べて圧倒的に軽く感じます。私もGT-100からの移行で移動が楽になりました。自宅以外で使うユーザーにとっては超重要事項ですよね。

専用のソフトケースも販売されています。

その他の持ち運び用のケースについては、こちらの記事をご覧ください。

『BOSS GT-1000』の持ち運び用ケース3選

使い方が広がる3系統の出力端子

GT-1000には、MAIN OUTPUT、SUB OUTPUT(XLRタイプ)、PHONESと3系統の出力端子が備わっており、それぞれ別の出力設定を割り当てることが可能です。

GT-1000の端子
GT-1000の端子

これにより、ハイエンドマルチの登場で流行り出した『SUB OUTPUT(XLRタイプ)』から直接PAへ、通常の『OUTPUT』からは自分のモニター代わりにギターアンプへ、というようなことも可能なわけです。

ただ、通常のハコではまだまだギターはアンプの音をマイクで拾う前提で考えられていることや、出演する対バンの多さからくるPAさんへの負荷、普段の練習でもアンプを使っていることを考え、自分が出演するような規模のライブでこの手法を実践するのは時期尚早かなーと個人的には考えています。

とは言っても、この豊富な出力端子はアイデア次第で様々なことに使えます。私は、自分の音を返すワイヤレスイヤモニへの出力として使っています。ご参考までに。

ワイヤレス・イヤモニのススメ【ギタリスト編】

サポートについて

GT-1000の製造元であるRoland社が日本の会社だという点も、GT-1000を選ぶメリットではないでしょうか。これにより日本語での詳しい情報や、素早いサポート対応を得られます。

充実した日本語情報

GT-1000には、マニュアル以外の情報も充実しています。その一つが『The Ultimate Guide to GT-1000』です。

参考 BOSS - The Ultimate Guide to GT-1000BOSS - JP

GT-1000を実際に使っていく上での具体的なポイントが記載されており、かなり参考になるのではないでしょうか。購入後に一通り目を通しておくことで、GT-1000でできることの全体像が見えてくると思います。

アップデートにより成長

GT-1000は、現在もアップデートにより成長し続けています。先日もVersion 3.1が公開され、FXブロックでも歪み系エフェクトが使える、INPUT LEVELを10個まで記憶できる、などの機能が追加されました。

購入後も、ホームページからダウンロードできるパッチを当てることでアップデートが可能です。

素早い修理対応

以前に一度、GT-1000を修理に出した際は、1週間程度の短期間で素早く対応していただけました。これも、海外への発送や部品取り寄せ不要の日本のメーカーだからこその素早い対応ではないでしょうか。

ネットで購入したGT-1000の修理の出し方は、こちらの記事にまとめています。

ネットで購入した『BOSS GT-1000』の修理はどこに出すのか問題

価格(コスパ)について

これで税込み価格11万円か…安いんじゃね?(錯乱)

まあ実際ハイエンドマルチと呼ばれる分野の製品の中ではかなり高コスパですよね。

他製品との比較検討

最後に他製品と比較した記事とのリンクを張っておきますので、ぜひご覧下さい。

BOSS GT-100・GT-1との比較

BOSSのGT-100やGT-1との比較については、こちらの記事をご覧ください。

歴代GTシリーズ愛用者が『BOSS GT-1000』に乗り換えて感じたこと

他社ハイエンドマルチとの比較

kemperやHelixなど他社のハイエンドマルチとの比較については、こちらの記事をご覧ください。

Helix・Kemperと弾き比べて見えたGT-1000の特徴

最後に

かなりの長文になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。ハイエンドマルチの購入で迷われている方の参考になっていれば、書いた甲斐があるというものです。

まだまだ迷われている方は、ぜひ熟考を重ねてください。本記事ではGT-1000を激推ししておりますが、どれを選んでも後悔はない素晴らしい製品だと思います。ぜひ、素敵なハイエンドマルチ生活をお送りください。

関連記事
私の使用機材については、こちらの記事をご覧ください。
ヤマシタの使用機材紹介

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