前作『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』では、野生のライダーファンとしての勘が働き、意地でも公開初日の初回を見に行ったことで、“例のネタバレ”を事前に知ること無く映画を楽しむことができた。
今回もドライブウォッチが絡んでくるという情報をチラ見させられたことで、“未発表のレジェンドが出演するかも!?”という存在するかどうかもわからない人参をぶら下げられた気持ちになりながら、午前休を取得してまで公開初日の初回を見に行くくらい従順な信者として私の心は出来上がってしまっている。それくらい、前回の平ジェネFOREVERは最高だった。
仮面ライダーって最っ高じゃね?【平成ジェネレーションズFOREVER 考察・感想】今回も期待を胸に映画館に足を運んだわけだが、映画公開前までに公開されている情報は概ね以下のような内容だ。毎度ながら、子供向け映画の尺に収まるのか?っていう感じ。
- 仮面ライダードライブから詩島剛、クリム・スタインベルトがレジェンドゲストとして登場する。
- 戦国時代にタイムスリップする。
- クォーツァーというウォズと同じ衣装を纏った敵集団が登場する。
- バールクス・ザモナス・ジンゾスという敵ライダーが登場する。
- 仮面ライダージオウがオーマフォームへ変身する。
- 仮面ライダージオウの“真の最終回”、ひいては“平成ライダーの最終回”である。
- 令和ライダー『仮面ライダーゼロワン』が登場する。
結果的には竹内涼真さんの出演こそなかったが、私の信仰心を更に深める最高に楽しい映画だったので早速感想を書き記す。
以下、ネタバレ含みます。
新たな平成ライダーけしからんおじさん“クォーツァー”
本作は、前半と後半に構成が大きく分かれている。
前半は、ソウゴがドライブウォッチを手に入れるまでの物語。言わばジオウのドライブ編だ。ソウゴ達が詩島剛、クリム・スタインベルトと出会い、仮面ライダードライブ消滅の未来を防ぐため戦国時代にタイムスリップ。そこで織田信長と共に行動するという、過去にもあったような無かったような実に平成ライダーの映画らしい内容だ。
ソウゴが合戦やお香の知識などで博識な部分を見せたのには「お前は本当に常磐ソウゴか?」と桜井侑斗ばりのツッコミを入れそうになったが、そういや歴史だけは得意なんだったっけか。
一方後半は、ドライブウォッチをクリム達から受け継ぎ、真の意味で全てのウォッチを手に入れたソウゴの前に今回の黒幕がたちはだかる。それこそが歴史の管理者にして、鳴滝、昭和ライダーに続く、新たな平成ライダーけしからんおじさん“クォーツァー”だ。
祝え!メタ視点を受け継ぎ、昭和と平成をしろしめす平成ライダーけしからんおじさん軍団。その名もクォーツォー。まさに生誕の瞬間である。
いや、クォーツァーの場合は、平成ライダーどころか平成という時代そのものが気に入らないようだ。平成を「綺麗でないもの」と言い放ち、巻き戻して一からやり直そうとしている。さらに平成ライダーの設定や世界観がバラバラなのが気に入らないらしく、ジオウにまとめようとしているらしい。
そういった影響が、カブト編で加賀美が言った「渋谷はいつあんなに復興したんだ?」というような世界の違和感につながっていたのではないだろうか。
そしてなんと、ウォズまでもが実はクォーツァーの一員であり、本当の我が魔王こと常磐SOUGO(ISSA)のために、ソウゴを逢魔降臨暦の通りに導く存在だっとということが明らかになる。
ウォズ…お前DA PAMPやったんか…。
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ぶつ切りに見えて交差するドライブ編とクォーツァー編
前述の通り、ストーリー上は一見ぶつ切りに見える前半のドライブ編と後半のクォーツァー編だが、本作はその絡ませ方が非常にうまい。
前半で出会った信長は、あまりに後世に語り継がれているイメージと異なっていた。それをソウゴ自身がオーマジオウに重ねて『語り継がれているイメージと実際の人物像には大きな乖離がある』ということをゲイツ達に語りかける。
さらに、皆を引っ張っていかなければならない立場にある信長に対し『立場に関わらずやりたいようにやればいい』と語りかけた。
この2つのテーマが後半にびんびんに活きてくる。
過去にソウゴとオーマジオウの人物像の違いに悩まされたゲイツは「俺がそうだったように、お前も一緒に過ごしてソウゴという人間の魅力に惹かれているんじゃないのか?」とウォズに拳を交えながら問いかけた。
ウォズもそれを自覚しており、クォーツァーとして導く役目、自分の立場を放棄し、常磐ソウゴの仲間として、平成ライダーの一員として生きることを決断した。
突然画面に向かって「皆さんを導けるのはここまでです。」と語りかけ、逢魔降臨暦をミスターサタンばりの怪力で破り捨てるシーンは爽快感とカタルシスに溢れ、私的には最も高まったシーンだった。
まったく性質の違う二つのお話を、二つのテーマでがっちり結びつけるうまさに感服し、3人の精神的結びつきに圧倒的尊さを感じた。
クォーツァーへのアンサー
平成を一からやり直そうとするクォーツァーは、平成生まれ絶対吸い込むホールでリセットを開始する。ソウゴも一度は吸い込まれそうになるも、仮面ライダージオウオーマフォームとして覚醒し、全平成ライダーと共に最後の戦いを挑む。
そこからは春映画っぽい大乱闘スマッシュブラザーズ状態になるわけだが、TVシリーズの平成ライダーをジオウに収束させようとしたクォーツァーに対する平成ライダーの答えが、スピンオフのブレン、舞台の残月カチドキアームズ、配信の仮面戦隊ゴライダー、TV企画のG、漫画版のクウガ、と更に多種多様なあらゆる平成ライダーを引っ張りだしてきて大乱闘するのマジ最高。
多種多様な可能性の塊。みんな違ってみんないい。それが平成ライダーなんだ!
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更に仮面ノリダーこと木梨猛まで登場するとは…完全に想定外。気づけば昭和ライダー(ノリダーだけど)唯一のレジェンド出演やん!皮肉にも令和と平成の物語に昭和を生きた人間にしかわからないであろうネタをチョイスしてくるとは。「ぶっとばすぞぉ~!」のセリフが聞こえた瞬間、数人のおっさんの笑い声が映画館に響いたぜ。
そして物語はラストまで怒涛の勢いと悪ふざけで走り切る。
各ライダーのベルトをアップで映し出した構図での、流れるような最強フォームへの変身シーンはめちゃくちゃかっこよかったし、バールクスのバイオ化やJ(巨大)化は、やるよね~(笑)って楽しさがあった。
そして締めは平成ライダー20周年番組ロゴ入りオールライダーキックでの平成パネル作成。ISSAは小渕さんになったのだ。
俺たちは何を見せられているんだ。
冬映画のような過去ライダーとのコラボに始まり、夏映画らしいクライマックス直前のシリアスさを見せ、春映画のようなIQ3のお祭りで終わる。これが平成ライダーの総括という意味か!
オーマジオウの正体を考える
ソウゴはSOUGOの替え玉であり、ウォズによって生まれながらの王だと勘違いさせられていた、ということが明らかになった。生まれながらの王であるSOUGOのためにライドウォッチを集めさせられていたのだ。しかしそれを知ってもなお、世界を良くしたいという想いから再び立ち上がり、仮面ライダージオウオーマフォームとなる。
そして、仮面ライダーバールクスこと常磐SOUGOを打ち破った結果、最低最悪のオーマジオウが世界を支配する未来は消滅し、ゲイツとツクヨミが現代にタイムスリップしてくるとういう事実も無くなったことで、二人はその場から消えてしまった。
(その後のウォズを含めた復活については、今後のTVシリーズで何かオチはつくのかなと考えている。)
ところで、オーマジオウとは何だったのか。
最低最悪のオーマジオウの未来が消滅したという現象から考えられるオーマジオウの正体には、二通りの可能性があると思っている。
一つは、常磐SOUGO=オーマジオウであり、現代でオーマジオウを倒したので、当然未来のオーマジオウも消えた、というわけだ。TVシリーズで、ウォズがオーマジオウに仕えている描写もあったので、ウォズがSOUGOに仕えていたという今回明らかになった事実を考えてもしっくりくる。
もう一つは、ソウゴがオーマジオウではなく、オーマフォームとして覚醒したことで、オーマジオウになる未来が回避された、というパターンだ。オーマジオウは、今回の映画内でもジオウのことを「若き日の私」と呼んでいるので、これはこれでしっくりくる部分もある。
つまりゲイツとツクヨミの未来の『オーマジオウ=常磐SOUGO』なのか『オーマジオウ=常磐ソウゴ』なのか、この辺りがはっきりしなかった。
うーん、わからん。この辺りを踏まえてもう一度映画を見たい。
最後に
『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』で一度総括した平成ライダーを、ジオウのラストの展開に絡ませながら、平成ライダーオタク向けに濃~い部分をもう一度絞りきって全て抽出した。そんな映画だったと思う。圧倒的に楽しかった。
平ジェネFOREVERが多くの人に向けて開かれたお祭りだったなら、本作は身内ノリのちょっとした悪ふざけなら許される後夜祭といったところだろうか。
今になって、平成ライダー対昭和ライダーでの鳴滝のこのセリフが身にしみる。
「おのれディケイド!ライダーってのは…何て素晴らしいんだ!」
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