救済としての青春物語【仮面ライダージオウ NEXT TIM ゲイツ、マジェスティ 考察・感想】

仮面ライダージオウの後日談にあたるVシネクスト『仮面ライダージオウ NEXT TIME ゲイツ、マジェスティ』を劇場で見てきた。

本作は、仮面ライダージオウTVシリーズ最終話のその後を描いた作品だ。後日談…約一年前、あまりにも早い復活により戦兎と万丈が二人で肩を寄せ合いながら生きるユートピア(?)をぶち壊したエボルトさんの悪夢が再び訪れることを恐れながらの鑑賞だったわけだが、そんな気持ちは早々に消え失せてしまうほどにさわやかな青春物語に仕上がっていた。

最終話でソウゴがスクラップ&ビルドの末に創造した新世界は、ゲイツやツクヨミはもちろん、オーラやウールまでもが普通の高校生として暮らす平和な世界だった。(予想通りスォルツ先生までもが登場。)

そんな平和な世界にちょっかいをかけるのは、とっくの昔に消滅したはずの白ウォズだ。なるほど、タイムジャッカー不在の新世界でどうやって新たな物語が動き出すのか疑問だったが、 特異点的な性質を持つアイツを引っ張りだしてきたか。その白ウォズは、ゲイツを救世主にさせるべくブランクライドウォッチを手渡す。これは、黒ウォズがソウゴにブランクライドウォッチを渡した第1話の完全なるセルフオマージュだ。

いや、既に時代は令和。ゼロワンが現在進行形の作品となっている。そして、この作品内で流れている時間が2018年であることを考えると、ジオウ序盤の『もしもアイツが仮面ライダーになっていなかったら…』というifストーリーで進行する展開のセルフオマージュにも思えてくる。

何にしろ、これはジオウのシステムそのものであることに間違いなく、思わずにやけてしまう展開だった。

劇場の大きなスクリーンを通して久々に目にしたゲイツ達は、学園生活を存分に楽しんでいるようだった。平ジェネや令ジェネなどで、今までにも学園生活の様子が描かれてはいたが、今回の作品での描写は彼らの学園生活により一層踏み込んでいる。

実に楽しそうな…絵に描いたような青春を謳歌しているではないか。

そういえば、元々ゲイツとツクヨミは最低最悪の魔王が支配するディストピアの住人だった。学校も教育も部活もへったくれもない。そしてオーラとウールも、どういった経緯でタイムジャッカーとして活動するに至ったか定かではないが、殺伐とした世界に生きる若者達だった。

そんな4人とソウゴが同じ学校で楽しい青春を送っている。部活に勤しみ、恋愛を楽しみ、進路に悩み、学園生活をごくごく普通のものとして送っている。

もうこれだけで泣けん?(一年間で培った親目線)

これは学園エヴァ(古のオタク単語)とは違う。シンジ君の妄想世界ではなく、ソウゴが創造した現実の世界なのだ。

そしてまたそれぞれのキャラ設定が良い。この学園生活の世界は、ソウゴが創造した世界だ。本来はこの時代にいなかったはずのゲイツ達の生活環境や関係性は、ソウゴがこうだったらいいな…という願望の元、オーマジオウの力で生み出した設定のはずだ。ゲイツは柔道部としてオリンピックを目指し、(テストで3点取ったり織田信長を知らなかったり)アホのはずのツクヨミは優等生になり、オーラは高慢ちきな金持ちのご令嬢として、ウールはそんなオーラに付きまとう弟分としての役割を与えられた。

特にゲイツに恋するオーラ良すぎんかった?

ウールもオーラ好きなんだろうな…。良いねぇ、青春だねえ。

これはソウゴが仲間を想い、辛い時代を生き命を落とした彼らに、オーマジオウの力で与えた救済としての青春物語だったのではないだろうか(妄想)。そしてそれを我が魔王の希望通り、見守ることに撤していた黒ウォズもまたよかったなあ。

そんな物語の本筋は、そんなゲイツの王道成長物語だ。TVシリーズのようにアナザーライダーを倒すための複雑なルールやレジェンドライダーの世界観に引っ張られることなく、ゲイツの成長がドストレートに描かれていた。 ジオウのエピソードでこれほどまでに正統派に描かれた成長物語があっただろうか。

レジェンド2号ライダーによる作品への味付けも、出しゃばることなくごく自然なものでありながら、ゲイツの成長を促すのに欠かせない要素として機能していた。もちろん、バースのプロレス戦法や、エンジンブレードをガリガリとひきずる照井を久々に見られたのが最高だったのは言うまでもない。草加はまた変身できなかったな。

自らの進む道を見つけ、仮面ライダーとしての記憶を取り戻したゲイツは、白ウォズとの対決を迎える。「支配したいだけの人間に上に立つ資格はない。」というゲイツのセリフは、TVシリーズのオーズ編でソウゴが檀黎斗に言ったのとまったく同じ内容だ。あの世界のソウゴとこの世界のゲイツに同じことを言わせるのが、これまたエモい。

海東の助力によりゲイツマジェスティとなったゲイツは、白ウォズを撃破する。そしてラスト。進路希望の用紙にソウゴは“王様”ゲイツは“救世主”と、堂々と書いた。うん、この世界でもこれから二人はずっとライバルとして切磋琢磨していくんだなあ。すごく綺麗な締め方。

うん、まあ現実問題進路どうすんねんって話ではあるんだが。

最後に、YouTubeチャンネルの相方であるメテヲ君と一緒に感想を動画に残した。見終わった直後の感想であり、本ブログの内容とは異なる部分もあるが、見ていただけると幸いだ。

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