ゼロワンにおけるライダーとAIの分離が生み出す効果と面白さ【仮面ライダーゼロワン 考察・感想】

仮面ライダーゼロワンがおもしろい。

この記事の執筆時点では第7話までの放送を終えているわけだが、物語はわかりやすいし、仮面ライダーはかっこいいし、ストーリーの進行やキャラに強引さがなく、面白さに加えて安心感まで覚える。この感覚は仮面ライダーW以来かもしれない。

この面白さと安心感はどこからくるものなのだろうか。我々はその謎を解き明かすべくアマゾンの奥地へと向かう勇気はないので脳内で考察してみた。

テーマである“AI”の属性を持たないゼロワン

仮面ライダーゼロワンはどういう特徴を持った作品なんやろかいなあ。

まずはそんなことを改めて考えてみたのだが、令和仮面ライダーであるゼロワンを平成から続く仮面ライダーシリーズという文脈の中で眺めると、作品のテーマである“AI”を仮面ライダー自身が背負っていないという特徴が浮かび上がってきた。

例えば、『仮面ライダー+魔法使い』の仮面ライダーウィザードは仮面ライダー自身が魔法使いであり、『仮面ライダー+ゲーム+医者』の仮面ライダーエグゼイドは仮面ライダー自身がゲーマーであり医者だ。これらの作品では、仮面ライダー自身がその作品のテーマとなる属性を持っていると言える。

更にこれらの属性は、ファントムはアンダーワールドで倒さなければならない、バグスターはレベル1で患者と分離しなければならない、というような作品独自の複雑なルールにつながっている。

もちろん、そうした作品独自の世界観が平成仮面ライダーシリーズの面白さであり、『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』では、平成ライダーの世界観の取っ散らかり具合を否定する敵組織クォーツァーを倒すことで、平成ライダーの凸凹をアイデンティティとして肯定している。

しかし仮面ライダーゼロワンでは、ベルトがAIで敵を足すための弱点を探ったり、スーツが自分自身で考えて自動的に戦ったりということはない。更に、変身者である飛電或人くん自身がAIロボとして大きな問題に直面しているというわけでもない。(これは今後のストーリー次第ではあるが。)『仮面ライダー+AI』という世界観でありながらも、仮面ライダー自身はAIの属性を持っていないのだ。

AIの要素を持っているのは、あくまでサブキャラクターであるヒューマギア達だ。イズはAIロボとしてゼロワンをサポートし、個性豊かなゲストヒューマギア達が毎週登場しては、滅亡迅雷.netに狙われている。

この仮面ライダーとテーマ(AI)の分離は、仮面ライダーの戦い方をシンプルなものにした。ウィザードやエグゼイドの時のような戦いのルールなどなくシンプルに敵と向き合っており、世界観に縛られることなく、ひたすら仮面ライダーがかっこよく見える演出に集中しているように思う。私は第1話のゼロワンとベローサマギアの戦闘シーンに早くも心を奪われ、第2話の仮面ライダーバルカンの変身シーンのかっこよさに痺れた。

もちろん、イズの可愛さとか唯阿の顔の良さとかにも心奪われた。

さらに仮面ライダーとテーマ(AI)の分離は 、週替りで登場するヒューマギアに大きな物語を与え、サブキャラクターの中からも腹筋崩壊太郎を始めとした個性的な人気キャラクターを誕生させた。仮面ライダーゼロワンの物語が非常にわかりやすい理由はココにあると思う。(少し言い方が悪くなるが)ゼロワンの物語は、今まで我々が散々見てきたAIロボがテーマの物語の文法に沿って描かれているからだ。

アイ,ロボット、 A.I.、攻殻機動隊、イヴの時間…AIロボが登場する物語は世の中に星の数ほど存在しており、少し考えただけでもきりなく思い浮かぶ。映画をよく見る人なら、遺伝子レベルで理解してるんじゃね?って程には、AIロボの物語って大体こういうパターンがあるよね、と分類分けが可能だろう。

ゼロワンでは、ヒューマギアとその周りを取り巻く人物が毎週何かしらの問題に直面するわけだが、我々はそれをどこかで見たことのある物語として脳内処理し、設定や感情を勝手に想像で膨らましている。AIロボ認めん寿司屋の頑固親父、AIロボを道具としてしか見ずぞんざいに扱う漫画家、声優AIロボを死んだ娘として扱う父親、こういったキャラクターが登場した時点で、ああそのパターンね、と脳内で情報を補完しているはずだ。この理解と想像のしやすさに私は安心感を感じているのかもしれない。

この理解と想像のしやすさに私は安心感を感じているのかもしれない。

そして、そんな親しみのある物語が提起した問題に対して飛電或人くんは、AI会社の社長兼仮面ライダーとしての答えをきちんと示してくれる。

つまり仮面ライダーゼロワンは、AIロボが登場する様々な文脈の物語を週替りに登場するヒューマギアに背負わせ、戦いのルールから解き放たれたかっこいい仮面ライダーという要素とミックスさせる、という点において見事。

あと、イズちゃんのロボ娘としての演出も見事。第7話のフーフーも最高だったよね!?っていうか感情表現乏しいはずなのに既に第2話の時点で或人くんとのバディ感を醸し出してるんだよね。素晴らしすぎる。ただ、キャラとして好きになればなるほど今後が怖い。OPでの不穏な長髪のイズ。彼女の過去か未来かはわからないが、きっとシリアスな展開が待ち受けてrおいおい表題よりイズちゃんについての方が長く語れるんじゃないか?

これが、私がゼロワンを面白いと感じている理由だ。

ゼロワンが神作品になるには

仮面ライダーゼロワンが現時点で面白いのは間違いないのだが、では最終回を迎えた時に神作品と呼ばれるようになるためには何が必要か。

それは、今現在積み重ねているAIの文法に沿った物語をどこかのタイミングで大きく裏切れるかどうか、だろう。

OPに登場する長髪のイズ、 飛電インテリジェンスが隠しているデイブレイクの真実、なぜ不破だけがデイブレイクで助かったのか、陣の正体、刃唯阿のもくろみ、現在は伏線を張り巡らせている段階だが、ぜひともぼくらの想像をどこかで大きく裏切って、新たなAIの物語を見せてほしい。

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