戦隊同士の繊細な関係、王道の関係【劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVSルパンレンジャーVSパトレンジャー 考察・感想】

ひっさびさの戦隊単独劇場版を公開初日に見に行ったわけだが、 見終わった後の気持ちを一言で言うなれば「そうそう、こういうのが見たかったんだよ!」という具合だろうか。その内容の良さに加え、久々にルパパトに会えたことによる満足感に浸りながら劇場を後にすることができた。

物語はコウとティラミーゴの喧嘩にはじまり、クレオンが偶然見つけたギャングラーの残党『ガニマ』からマイナソーを生み出し、そのガニマの金庫の中に閉じ込められた騎士龍達を助けるためリュウソウジャーが奔走する、というどちらかといえばリュウソウジャー寄りの文脈にルパパトの要素を上手く絡めながら進行していく。

分かれて行動していたリュウソウジャー達はそれぞれがルパパトのメンバーと出会うわけだが、まずこのルパパトとの絡み方が抜群で、考え得る限り最高の組み合わせになっていたのではないだろうか。バンバと圭一郎の不器用堅物男子コンビ、カナロとつかさのどう考えてもいつものくだりが最高に面白くなる二人、 初美花とオトという超丸顔妹コンビ…。もう制作側がファンの心を掴むためガシガシ攻めまくってくるこの感じ、嫌いじゃない。

そしてコウと魁利の主役レッドコンビ。魁利は、迷っているコウの決断に踏み込みすぎることなく、自分で答えを導き出せるよう見守った。あのルパンレンジャーもついに先輩ヒーローに…という感慨深い瞬間だった。

本作は、ルパパトの後日談としても完璧だったのではないだろうか。全く蛇足感のようなものは感じなかった。

安易に復活怪人が出てきて「今までの苦労は?」みたな気持ちにもならなかったし(エボルトさんの悪口はやめろ)、なによりルパンレンジャーサイドとパトレンジャーサイドの距離感が絶妙だった。

パトレンジャーの3人は現在でも国際警察としての任務に勤しんでいる。一方、ルパンレンジャーの3人は引き続き指名手配中ながらも、それぞれがひっそりと自分たちの暮らしに戻っているようだった。

いや、ひっそりというと語弊があるかもしれない。魁利は探偵、透真はシェフ、初美花は専門学生として暮らしており、指名手配中やけどわりと自由に暮らしてるやんけ、とは思わざるを得なかった。この辺りはコグレさんもといルパン家のパワーでなんとかしてもらっているのかもしれない。

そんな中、つかさパイセンは偶然訪れたレストランで透真と出会う。非番だったつかさだが、捕まえようとすることも通報することもなかった。透真の方も、なれ合うでもなく逃走するわけでもなく、見つかってしまった以上このレストランにはいられないな…と呟くに留まった。

一方、魁利と圭一郎はいつかの歩道橋で落ち合い、悩む現在のレッド、コウの行く添えについて話し合った。

お互いがお互いの事情を理解しており、決して相手を追い込んだりしようとはしない。むしろパトレンサイドは常に相手のことを一人の人間として気にかけているが、なれ合うことはせず完全に一線を引いた関係であることが、この2つのシーンからひしひしと伝わってきた。

最終回の時点から変わらず、手を伸ばしてあげたいが決して馴れ合ってはならない、という関係のままなのだ。ルパパトの魅力はこの美しくも切ない関係だ。そこが変わっていなかったことで、後日談として安心して見ることができた。

全体を通して言えることだが、ルパンレンジャーとパトレンジャーの関係は美しく繊細に、ルパパトとリュウソウジャーの関係は楽しく(先輩後輩の)王道で、という描き方が本作の芯になっていように思う。ルパパト終盤の繊細な空気感とVSシリーズのお祭り感がきちんと両立されているのが最高だった。

ところで、少し話が本筋からそれるが…やはりルパパトのロケ地の使い方は素晴らしい。聖地巡礼オタクの私としては言及せざるを得ないわけだが、上記の圭一郎と魁利が落ち合った歩道橋は、第10話で圭一郎が荒れる魁利を気にかけて缶コーヒーを渡そうとした場所であり、映っただけで一瞬にしてあの頃の記憶が蘇るエモエモのエモなプレイスなのだ。

この場所『若木のぞみ歩道橋 』は仮面ライダージオウにも登場しており、下記の記事にまとめている。

【仮面ライダージオウロケ地】板橋区周辺で聖地巡礼してきた【東京都】

そして圭一郎がバンバに手錠をかけた横浜みなとみらい21のイカリのオブジェがある港もルパパトらしいスタイリッシュな場所としてよく記憶に残っている場所だった。ここにバンバとトワが現れると、一瞬でクロスオーバー作品の雰囲気が完成した。

ちなみにだが、本作で透真が働いていた新しいレストランは、完全に仮面ライダー鎧武の凰蓮・ピエール・アルフォンゾのお店『シャルモン』だったぞ。

【仮面ライダー鎧武ロケ地】『シャルモン』こと『オークウッド』でランチを食べてきた【埼玉県】

話を本筋に戻して…ラストのリュウソウジャー、ルパパトが入り乱れての戦闘シーンには楽しい映像が詰まっていた。全3戦隊総勢13名での名乗りはもちろんのこと、武器交換とい名のワクワク協力プレイシステム、咲也のボケからのスーパーリュウソウグリーン(?)、そして咲也と初美花の絡み(これは途中で出すと悲しい方向にしか持っていけなくなっちゃうから最後の明るいノリの部分で出してくれたのかな?)、どれもがちょうど良いレベルで見たい映像のオンパレードだった。

これがまためんどくさい話なのだが、これが見たかったんでしょ?ってことをやられすぎると、見てる側としてはちょっと引いてしまうのだ。例えばだが、今更圭一郎と魁利の馴れ合いのシーンなんてあった日にゃあ目も当てられなくなる。そういうのはTVシリーズ本編中盤の旅行回で十分だ。しかし、そんなことはこの劇場版には決してない。ちゃんとルパパトファンの心理を理解した上での物語になっていたように思う。

聞けば、ルパパトのメイン脚本を担当していた香村さんが、忙しい合間を縫って参加されたそうじゃないか。後日談で作品に過剰な着色も味付けも加えず、1年かけて完成したルパパトという作品をすごく大事にしている感じが伝わってくる素晴らしい脚本であり、私の中の「ルパパトが大好きだ!」という気持ちを再燃させてくれる劇場版だった。

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